システムダイナミックス入門 Introduction to System Dynamics

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Step 0: システムダイナミックスの言語

 
左の図は、有限な地球環境の中で、過去の遺産と文化を継承しながら未来を創造してゆく人間社会のダイナミズムをイメージしたもので す。システムダイナミックスと未来研究の関係がコンパクトに表現されています。
 私たちは言語によって物事をとらえようとしますが、英語は26文字、日本語は51文字(?)の組み合わせで表現されます。それに反して、システムダイナ ミックスの言語は、変数、ストック変数、フ ロー、情報の流れ(矢印)と いったわずか4つの要素(文字)から構成されており、これらの組み合わせからほとんどあらゆるシステムのダイナミックな動きが表現できます。左の図では、 過去と未 来が変数、システム がストック変数、ダ イナミックスがフローで 表わされています。これらを結ん でいるのが、青色の矢印で示された情報の流れで す。
 皆さんが子供の頃に遊んだレゴを想起してください。数個の種類の簡単なレゴから、いろいろと複雑な形をした物を作り出して得意になったことがありません でしたか。同じように これら4つの要素を組み合わせることにより、簡単な銀行預金の計算から、企業・自治体のシステム、マクロ経済システム、地球環境システム、そして動植物 の生態系システムといった複雑なシステムまですべて構築できるのです。さらにロメオとジュリエットの恋愛感情や仏教(釈迦)の教えといった数値データでは とら えどころのないよう なものまでシステムとしてとらえられるのです。すごいですね。
 一番小さなシステムは、銀行預金や人口といった1つのストック変数からなるシステムです。企業・自治体モデ ルやマクロ経済モデルはで数百個から数千個の(ストック)変数でシステムが構築されます。また数万、十数万個の変数からなるモデルも構築されています。こ のよ うに小中学 生から、ロケットサイエンスを駆使する科学者まで、全く同じ原理原則ー4つの要素の組み合わせーで、システムのダイナミックな動きをとらえてゆけるのが、 システムダ イナミックスの大きな特徴です。あたかも子供の頃に作ったレゴの建物を、成長とともに増築しながら大きな建造物に仕上げてゆくことが出来るように、小中学 校で作 成 した簡単なモデルを、知識の増大、深化とともにより複雑なモデルに進化させてゆくことが出来るのです。
 こうした特徴に驚かれた方は、ご自身の身体を考えてみてください。私たちの身体は約3万個の遺伝子による「設計図」から作られているそうです。遺伝 子 の実態は、デオキシリボ核酸というDNA分子で、DNAは、シトシン、アデニン、チミン、グアニンという4つの核酸塩基分子で作られています。すな わち4つの分子の組み合わせで作られた約3万個の遺伝子が私たちの身体のシステムを構成しているのです。4つの要素の組み合わせでシステムを構築してゆく シ ステムダイナミックの手法と相通じるものがありませんか。

では、システムダイナミックスのモデリング手法を学ぶにはどうすればいいのでしょうか。よく「学問に王道なし」といわれますが、 とりあえずは日本未来研究センター研究員の末武透さん作成の Vensim PLE 入門マニュアルを参照しながら、SD言語の4つを用いたお絵かきから初めてみてください。
 Vensim_PLE_ 入門マニュアル(ここをクリックしてダウンロード)

システム思考の8基本型 (Systems Archetype) の因果ループ図からSDモデルを構築する方法については、 以下の同志社ビジネススクールのディスカッション・ペーパー 「因果ループからSDモデルを構築する方法について −システム思考8基本型とことわざの考察」が参考になります。
 ディスカッション・ペーパーのダウンロード)

今後は小中学生向けの簡単なマニュアルも順次作成、公開してゆく予定です。