平成10年2月20日(金)午前10時30分から、神戸地方裁判所洲本支部において、第2回目の公判が行われました。以下は原告が陳述された被告の準備書面(1)に対する反論の準備書面です。原告代理人から当日いただいたコピーをOCR作成したものですので、乱丁があるかもわかりませんので、そのつもりでご参照ください。


(次回期日 二月二○目午前一○時二○分)

準備書面

 

        原告 山 口 薫

        被告 五色町


 右当事者間の平成九年(ワ)第七三号損害賠償等請求事件につき原告は左記のとおり弁論を準備する。


   一九九八年二月一八日

       

        右原告訴訟代理人

         弁護士 官崎 定邦


神戸地方裁判所

    洲本支部 御中

一、被告が営む「淡路五色ケーブルテレビ」事業は「五色町情報センター施設の設置及び管理に関する条例」に基づいて設置され、有線テレビジョン放送法による認可を得たもので、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために設けた施設、すなわち「公の施設」にあたるものであることは明らかである(地方自治法第二四四条)。


二、公の施設の利用関係の法的性質については、公法関係とみるか、私法関係とみるかにつき、かつて見解が対立していたが、現在では、各実定法の規定に即し、さらに各実定法の趣旨貝的を考え、その利用関係の性質を具体的に決定すべきであるとするのが、多数説である(成文堂発行、金子芳雄著「地方自治法」九六頁)。


三、公の施設の利用は、原則として当該施設の主体(被告)と利用者(原告)の間の合意によって成立するが、地方自治法第二四四条により、利用者である住民は正当な理由のない限りその利用を拒否されないし、利用にあたり不当な差別的取扱いをされない。

利用を拒否される正当な理由は、一般的には、@施設の能力ないし構造上の理由、A他人に著しく迷惑をかける行為、、B使用料未納等利用条件違反、が挙げられる(前掲書九七頁)。


四、「淡路五色ケーブルテレピ」事業は、当然ながら、住民に対して言論表現手段としてテレピ放映の機会を与えて住民の言論表現の自由を保障するものであって、住民に対して地方自治体が集会場を設置して住民の利用に供して住民の集会の自由を保障することと相通じるものである。

同時に、前記有線テレビジョン放送法はその番組編集について、わが国で唯一の言論法である放送法の番組内容規定を踏襲するとしている。


五、被告が「淡路五色ケーブルテレビ放送番組基準」を制定し、広告について「五色町情報センター広告放送取扱要綱」(甲第四号証)を制定しているのも、憲法上保障された住民の表現の自由の享受を全うさせつつ、第三項で述べた公の施設の適正な利用の原則を具体化し、また前項で述べた放送番組基準に添うよう具体化したものであるといえよう。


六、したがって、本件における被告町長の放送中止が憲法、地方自治法などの法規に照らし、また法規制定の趣旨目的に照らして、違法かどうかを決定すべきものである。

町長が恣意的に解釈決定すべきものではない。


七、本件放送中止の理由について、被告は「本件広告放送を行うことにより、町がフオーラムの主催者の立場に贅同するような印象を与えることを避けるため、本件広告放送の中止を判断するに至った」といいながら、同時に「本件広告放送の内容が中立的でないと主張するものではない」ともいっているが、全く矛盾した主張である。

また、右のような理由であれば、本件フオーラムの開催場所は五色町営の「五色町民センター」であり、これの使用も中止しなければおかしいことになろう。

さらに、「行攻の中立性に疑いがもたれることは、避けるべき事態であったと主張するものである」ならば、当日のフオーラムに被告町長が参加した事実はどう評価するのか、被告町長の参加はむしろ行政の中立性に疑いがもたれる恐れもない中立的内容のフォーラムであったことの証左である。

 加えていえば、被告町長は昨年一二月開催の町議会では、中止の理由につき「正式に許可を下ろしてもしも恣意的に中止をしたならば、これは当然山口さんの言われる表現の自由を侵したということになろうかと思うんですが」と答弁し、且つ「広告放送を五目前に申し込んでいないと放送できない・・・(本件広告は)その前段階である・・・ 要綱違反であるのにそれを黙認できませんので、事務的な処理として中止をしたということなんです」と答弁している。

 一体本件放送中止の眞の理由は何だったのか。

訴状請求原因第九項で述べたホームステイ拒否の事実を併せ考えれば、被告町長の恣意的な判断によるものとしか考えられない。


八、被告は広告料五○○○円の返還を申し出たと主張するが、申し出があったのは本件訴訟提起後である。

広告料は還付しないとのとの規定(前記要綱第七条)があるにもかかわらず、被告がその還付を申し出たのは同条但書により「申込者の責によらない」として被告が自らその非を認めたことによるものと判断し、原告としては受領することも考えはしたが、反面被告が暗に訴訟取り下げを求めるものであろうとも判断されたので、原告は判決終了までその申し出を受けるかどうかの判断を留保したまでである。

 被合の本件放送中止による損害については当然原告において立証するが、一点だけ述べておく。

本件フオーラムは百数十名で呼び掛けられたものであるが、被告の本件放送中止の結果呼ぴかけ人ですら町長敵視者と見られるのを恐れて参加しなかったし、現在も被告による差別扱いを恐れてフォーラムの呼びかけ人になっていることが公表されるのを恐れている住民がかなりいるのである。


                                    以上