以下は平成11年11月12日に被控訴人が大阪高等裁判所に提出した陳述書です。控訴人 代理人からいただいたコピーをOCR作成したものですので、 乱丁があるかもわかりませんので、そのつもりでご参照ください。


陳述書

一 はじめに
 斎藤貢氏の作成にかかる陳述書(甲第一九号証)および先般行われました同氏の証人尋間の内容には、事実に大きく反するところが数多くあリますので、以下順次述べていくことに致します。
 
二 斎藤氏と岡氏の関係について
 斎藤氏は、平成七年七月の五色町長選挙で、私の対立候補であった岡氏を後継者としたことはないと証言されていますが、これは事実ではありませんし、少なくとも町民の捉え方と違っています。当時の新聞報道によリますと、斎藤氏は、同年五月に「この四年間、さまざまな事業について協力してもらった人物(註・同氏)が『現職が出ないのなら挑戦したい』と言ってくれている」と述べておられ(乙第四二号証)、これを受けて岡氏は、「基本的には斎藤町長が推進してきた健康と福祉の町づくりを柱にした町政を承継していきたい」とはっきり述べておられます(乙第四四号証)。また、このときの町長選で岡氏側の選挙事務長をつとめた岡野律一氏や、かつて斎藤氏の支援者(後援会幹部)であった榊潔氏は、当時の斎藤町長が岡氏を応援し、実際上自らの後継者に指名していたことを明確に証言しておられます(乙第四五号証、四六号証)。斎藤氏がこの度の証人尋問において、どうしてこのこのことを正直に証言されなかったのは分かりませんが、同氏の証言は真実ではありません。
 
三 建設残土の搬入(個所)について
 斎藤氏は、町長時代に島外からの建設残土を二個所に入れたとされ、その二個所は地下水に影響のないところであったと証言されています。しかし、「水道水源と建設残土搬入の位置関係」という標題の地図をご覧頂ければ、斎藤町長時代の搬入場((鮎原上東山工区)も、私が町長に就任してからの搬入場所(鮎原上、都志米山)も、ともに水源から十分離れていることがお分かり頂けるかと存じます(乙第四七号証)。つまり、斎藤町長時代の搬入場所についてだけ場所的に問題がなかった訳ではありません。
 
四 推進派と.反対派の対立状況について
 斎藤氏は、建設残土搬入問題をめぐって推進派と反対派の対立はなかったと証言されていますが、この問題に直接関与されていなかった同氏がなぜそのように断言できるのか多いに疑問です。平成九年三月頃に鳥飼地区を中心として、三六七七名もの反対署名活動があったことはすでに何度もふれられていますが、三六七七名といえば五色町有権者の約四〇・八パーセントにも上る数です。これほど多くの町民が一つの問題に意見を表明するのは前代未聞のことで、普段の町政においては考えられない異常な事態であったといえます。
 斎藤氏は、この署名活動以外には推進派、反対派の行動についてほとんど何もご存じなかったようです。つまり、推進派と反対派の対立をほとんど何もご存しない斎藤氏が、双方の対立はなかったと断言することはできないはずです。建設残土搬入間題の渦中におられなかった同氏が十分な情報をお持ちでなかったことは仕方のないことですが、そうであれば発言にも慎重を期されるべきであることは当然です。同氏の言われ方は、ご自分が関知されないことは世の中に存在しないというに等しいことに.なリますので、ここからも同氏の証言の公平性には疑問がもたれます。
 
五 推進派からの損害賠償請求の可能性について
 斎藤氏は、仮に町が建設残土の搬入の中止を決定していたとしても、住民から損害賠償請求がなされる可能性など考えられなかった旨証言しておられます。しかし、ほ場整備事業は、米山土地改良地区代表の前林宏明氏の陳述書(乙第一九考証)にあるとおリ、調査設計費用、労力等のほか、国や県の補助金をもとに町費からも事業費の一〇パーセントを補助して行う町営の事業であり、町議会の議決をえて実施されるものです。したがいまして、町としては、正当な理由がない限りほ場整備事業を中止することなどできません。もし、これを十分な理由がないまま中止するのであれば、各地区の住民に対し、それまでに要した費用分や、事業が推進されていた場合の逸失利益など、相当金額の損害賠償を行う必要がでてくる可能性は十分にあります。町長を一六年間もつとめられた斎藤氏が何故この単純なことを理解されないのか疑問でなリません。
 
六 建設残土搬入に対する私の姿勢について
 斎藤氏の証言は、建設残土搬入に対する私の姿勢についても誤リがあります。同氏は、私の町長就任の挨拶から、残土搬入に積極的な姿勢がみてとれた旨証言をされていますが、私はそのようなことは申しておリません。広報ごしきの平成七年七月号に、私の就任挨拶が掲載されていますが(乙第四八号証)、私はこの記事のとおり、道路、河川、下水道、圃場整備などは県下でも最低の整備率であり、これを県下平均並になるよう整備を進めたいと思いますという趣旨の挨拶をしたと記憶しております。この発言から、私が残土の搬入に積極的であると捉えるのは、ずいぶん歪んだ理解の仕方であるといわざるを得ません。
 
七 ホームステイの件について
 斎藤氏は、ロシアのホームステイの件についても何故か証言されていますが、私が法廷でも述べましたとおリ、町長とホームステイ家族との交流会が多く予定されていたため、あくまで少しでも気まずい感じが出ては両国の子どもに申し訳ないと判断して、今回は山口さんにご遠慮願ったというものです。
 
八 最後に
 斎藤氏の証言ないし陳述内容は、以上指摘したように事実に反する部分が多く、到底公平な証言内容であるとはいえません。私としましては、最初に建設残土搬入問題に筋道をつけたのは当時の斎藤町長であり、町長経験のある先輩として、中立的な立場で静観すべき立場の方であると考えます。しかし、同氏の証言内容は、正確を欠くものであり、半ば意図的に山口氏に有利な内容となっています。その原因が平成七年の町長選挙にあるとは考えたくあリませんが、それが執拗に尾を引いているとしか考えられません。
 また、これが原因でないとしても、斎藤氏は、山口氏が代表をつとめる五色淡路未来フォーラムに寄付をされたり、山口氏が副委員長の立場にある緑の地球ネットワーク大学の事務局長をつとめておられますから、斎藤氏が本件で中立的であるとは決していえません。斎藤町長の時代には、緑の地球ネットワーク大学に毎年一〇〇〇万円以上の補助金が町から支出されていましたが(乙第四九号証の一ないし四)、私は多くの町民やマスコミから批判のあったこの支出を公約に基づいてとリ止めましたので、これに対する反発も当然あるように思います。


平成十一年一〇月二六日


(住所) 兵庫県津名郡五色町都志二〇七番地

(氏名) 五色町長

     砂尾 治